月寒高校 授業実施レポート
⽉寒⾼校「BEING ALIVE I」
〜「若者との共創プロジェクト」を実践する〜
目的
「若者との共創プロジェクト」は、2023年に札幌市で開催された、「G7 気候・エネルギー・環境大臣会合」をきっかけにスタートしました。
若者・大学・企業・自治体の4者がサステナブルな未来について考え、実際にアクションを起こし、全国・世界に発信する、G7のソフトレガシーに基づいたプロジェクトです。
本企画は、月寒高校の生徒とSWiTCHが札幌市のサステナブルな未来の像を北海道札幌月寒高等学校の生徒とともに作り・発信することで、札幌市民に「資源の循環」「生物多様性の保全」を自分ごと化してもらうことを目指します。
月寒高校「BEING ALIVE Ⅰ(探求の時間)」の授業を通して、月寒高校の高校生が周囲を巻き込んでサステナブルな社会を札幌市から作り上げる一員となれるよう、サステナブル化に向けた基本的な知識とその伝え方・広め方を学び、若者との共創の実践へと繋げます。
アクション実現へのロードマップ
2023年3月〜4月に全3回の「若者検討会」を実施し、のべ300名以上の参加者から200以上のアイデアが生まれました。そのアイデアを「10のアクション」にまとめあげました。
2023年4月15日・16日にG7気候・エネルギー・環境大臣会合の開催に合わせ、札幌ドームで「環境広場ほっかいどう」が開催され、「10のアクション」を企業・自治体に発信しました。
G7後も札幌市・地元企業と対話を重ね、2024年2月には「札幌国際芸術祭」の開催に合わせ、活動を報告。
2024年以降は「ゼロカーボン若者検討会」として、対話を継続していきます。
概要
月寒高校「BEING ALIVE Ⅰ(探求の時間)」後期計12回の授業にて、特別講師を迎えながら「SAPPOROエコみやげ(仮)」を中心に高校生とディスカッションを行い、サステナブルな土産に求める内容や、環境首都・札幌に求めることを検討し、その結果を札幌国際芸術祭内で開催した「若者との共創プロジェクト報告会」(2024年2月12日実施)で発表しました。
「SAPPOROエコみやげ(仮)」
「お土産」は訪れた旅行先から受け取るすべての記憶を作るものだと考えます。物品・体験など札幌で得られるものの中でもサステナブルなものを「SAPPORO エコみやげ(仮)」として認定することで、環境首都・札幌を全国に広め、日本全体のサステナブル化への機運を高めます。
- 開催日時
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月寒高校「BEING ALIVE Ⅰ」後期計12回
(2023年10月〜2024年2月) - 対象
- 「BEING ALIVE Ⅰ」内グループ 計25名
- 場所
- 月寒高校クラス(SWiTCHはオンラインで参加)
- SWiTCH
担当講師 -
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佐座 マナ
SWiTCH 代表理事 -
広瀬 知弘
SWiTCH 企画部
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- ゲスト講師
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池田 光司様
池田食品株式会社 社長 -
名兒耶 大輝様
北海道 経済局ゼロカーボン推進局ゼロカーボン産業課 -
葛西 顕様
札幌市経済観光局 観光・MICE推進部 観光地域づくり担当部長 -
佐竹 輝洋様
札幌市環境局 環境都市推進部 環境政策課 環境政策担当係長
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スケジュール
- vol 1.
- 10月4日「オリエンテーション」
- vol 2.
- 10月11日「サステナブルの基本のキ」
- vol 3.
- 10月18日「みんながやってきたサステナブルアクション」
- vol 4.
- 10月25日「きなこかりんとうから始めるサステナブルアクション」(ゲスト:池田 光司 様 - 池田食品株式会社 社長)
- vol 5.
- 11月1日「北海道のゼロカーボンに向けて」(ゲスト:名兒耶 大輝 様 - 北海道 経済局ゼロカーボン推進局)
- vol 6.
- 11月8日「サステナブルなキャリアを考えよう①」
- vol 7.
- 11月15日「サステナブルなキャリアを考えよう②」
- vol 8.
- 11月29日「SAPPOROエコみやげが目指すサステナブルな観光」(ゲスト:葛西 顕 様 - 札幌市経済観光局)
- vol 9.
- 12月6日「札幌の環境面での課題と目指す未来」(ゲスト:佐竹 輝洋 様 - 札幌市環境局)
- vol 10.
- 12月13日「エコみやげに欲しいものをまとめる」
- vol 11.
- 1月18日「エコみやげへの提言をまとめる」
- vol 12.
- 1月29日「シチズンサイエンス企画/ビデオレター撮影」
vol.1
2023年10月4日
オリエンテーション
- タイムテーブル:
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15:25 SWiTCH佐座 自己紹介
15:40 サステナビリティについての情報共有
16:05 本プロジェクト紹介
授業内容
初回の授業では、SWiTCH佐座から高校生のころに多くの国を回って見聞きしたことが環境問題に取り組むことになったこと。これまで取り組んできたことを高校生に紹介しました。
また、高校生がどのぐらいサステナビリティに関連した知識を持っているか確認するため、私たちが地球何個ぶんの資源を使って生きているのか?などのクイズをしながら話を進めました。
授業の後半においては、今回の授業を通じて月寒高校の生徒と一緒に札幌のサステナブルな未来を考えていきたいこと、そのためにSAPPOROエコみやげを通じて発信を行っていくことなど授業の流れを確認しました。
vol.2
2023年10月11日
サステナブルの基本のキ
- タイムテーブル:
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15:25 SWiTCHについて
15:35 SWiTCH佐座 レクチャー「サステナブルの3本軸 〜脱炭素・資源の循環・生物多様性〜」/ Q&Aタイム
16:10 グループワーク
16:15 授業終了
授業内容
SWiTCHが掲げているミッションの大枠、やっているプロジェクトの内容を説明した上で、その3本柱である「脱炭素」「資源の循環」「生物多様性」について詳しい説明をしました。
気候変動の進行は余談を許さないペースで進み、2050年までに温室効果ガスの実質排出量を0にする必要があること。ものを取って使って捨てる直線的な経済から、資源が循環する社会にする必要があること。多様な生物種とその生物が住むエリアを保全することの大切さを双方向のコミュニケーションをとりながら伝えました。
また宿題として環境省が監修する「自分ごとプラネット」に取り組んでもらい、普段の生活でどれくらい環境に影響を与えているのか考えてもらう時間をとりました。
vol.3
2023年10月18日
みんながやってきたサステナブルアクション
- タイムテーブル:
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15:25 前回の振り返り
15:40 SWiTCH佐座 レクチャー「じぶんごとプラネット /サステナブルアクションの共有」
16:10 今後の流れ説明
16:15 授業終了
授業内容
前回の宿題であったじぶんごとプラネットの結果を、グループ内で共有するところから始めました。自分でどれくらいの環境負荷を与えているのか客観視することによって、自分ごと化が進んだようです。
また、同じく宿題として取り組んでもらった「じぶんごとプラネット」のアクション実践についてもグループで共有してもらいました。生徒の中での自分ごと化が進んだことを確認した上で、次週以降のゲスト講師の話を聞く上で重要なカーボンニュートラルの考え方と再生可能エネルギーの普及についてレクチャーを実施しました。
vol.4
2023年10月25日
きなこかりんとうから始めるサステナブルアクション
- ゲストスピーカー:
- 池田 光司 様 - 池田食品株式会社 社長
- タイムテーブル:
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15:25 ゲストスピーカー紹介
15:30 池田先生レクチャー「きなこかりんとうから始めるサステナブル化(仮)」/ Q&Aタイム
16:15 授業終了
授業内容
池田社長の経歴のご紹介と、池田食品の会社について紹介を行った上で、池田社長からレクチャーをしていただきました。池田食品は北海道内で、ナッツ・小麦などを使ったお菓子を販売しているメーカーです。「さっぽろおみやげカシュー」などの地域ブランドを立ち上げています。
池田社長は「土壌の肥沃さ」と「自社工場でのエネルギー効率」に課題感を持って社内全体で取り組んでいます。授業内ではダストボウルを見て感じた土壌の劣化問題、4パーミルの考え方との出会いを紹介した後で社内で取り組んでいる豆と土壌の肥沃さを中心においた農商工連携の取り組みを紹介しました。
また、会社ではエネルギー効率の高い釜への置き換えを通じた脱炭素への取り組みも行っていました。
最後に、池田社長から「大海を知った井の中の蛙」になれとの高校生向けのメッセージをもらい、授業を締めくくりました。
vol.5
2023年11月1日
北海道のゼロカーボンに向けて
- ゲストスピーカー:
- 名兒耶 大輝 様 - 北海道 経済局ゼロカーボン推進局ゼロカーボン産業課
- タイムテーブル:
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15:25 今日の先生の紹介
15:30 名兒耶先生レクチャー「Zero Carbon Hokkaido 〜脱炭素への挑戦、新たな未来の創造〜」 / Q&Aタイム
15:50 グループワーク
16:15 授業終了
授業内容
名兒耶様より、気候変動の進行で北海道内でも雪の大幅減少やウニの大量死などの問題があり、こうした気候変動の緩和にはゼロカーボンを推進していくことが重要だということ、特に北海道は再生可能エネルギー開発のポテンシャルを持っている地域で、エネルギー源の転換を進めることが重要になることをお話しいただきました。
グループワークでは、再生可能エネルギー自体の魅力をあげてその普及をはかるためには何が必要かについてディスカッションが行われ、生徒からは再生可能エネルギー自体の面白い取り組みや不思議な発電方法を紹介する、ゲームやポイントなどやってみたくなる仕組みを作るなどのコメントが出ました。
キャリアが軸となる次週への宿題として、適職診断を受けるよう伝えました。
vol.6
2023年11月8日
サステナブルなキャリアを考えよう①
- タイムテーブル:
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15:25 前回の振り返り
15:35 SWiTCH佐座 レクチャー「グリーンジョブについて」/ Q&Aタイム
16:10 振り返りの時間
16:15 授業終了
授業内容
前回の宿題でやってきてもらった「適職診断」の結果をもとに、今後のキャリアのスキルと方向をどう考えるか、サステナビリティに関連する仕事はどのようなキャリアなのか考えてもらう講義を実施しました。
まず、佐座から将来の方向性を決めたきっかけ、その中で身につけたスキルの話をした後、佐座自身の適職診断の結果をもとに、その診断結果とキャリアが結果的にどう結びついたか説明しました。
その後、サステナブルな社会を作ることにつながるグリーンジョブについて紹介しました。
グループワークでは、グリーンジョブに準じ、適職診断で出た自分の長所と、そこから見えてくる興味のある仕事をまず共有しました。
その上で、全ての仕事が環境問題に関連するということを伝え、表示された適職がどう環境問題につながるか考えました。
vol.7
2023年11月15日
サステナブルなキャリアを考えよう②
- タイムテーブル:
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15:25 前回の振り返り
15:30 SWiTCH佐座 レクチャー「グリーンジョブに就くためには」 / Q & A タイム
16:00 グループワーク
16:15 授業終了
授業内容
グリーンジョブについて考えを深めていく講義を行いました。前回のグループワーク中に出てきたコメントをもとに、詳しいグリーンジョブの種類やその需要が増加していること、全ての仕事がグリーンジョブにつながる可能性があることを説明しました。
また、グリーンジョブに就くためには特定のスキルセットが要求され、スキルセットを身につけるためには自分で知識を学ぶことや、詳しい人と話してみることが重要であるとその指針を伝えました。グループワークでは、今後の高校生活や人生でどうグリーンなスキルを身につけるか考える時間をとりました。自分で能動的に調べてみること、発信の機会を重ねることで伝える力を鍛えること、身近なものを観察することなどの意見が上がりました。
vol.8
2023年11月29日
SAPPOROエコみやげが目指すサステナブルな観光
- ゲストスピーカー:
- 葛西 顕 様 - 札幌市経済観光局 観光・MICE推進部 観光地域づくり担当部長
- タイムテーブル:
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15:25 前回の振り返り
15:30 葛西顕先生レクチャー「持続可能な観光地経営の推進」/ Q & A タイム
15:55 グループワーク
16:15 授業終了
授業内容
葛西様から札幌のサステナブルな観光についてレクチャーしていただきました。札幌市には年間1,300万人を超える観光客が訪れ、その消費額の大きな割合は海外からの観光客が占めていること、こうした層の取り込みと、将来サステナブルな観光を維持するためには環境と混雑度を考える必要があるという話がありました。
グループワークでは、札幌市の藻岩山をサステナブルな観光地にするためのアイデアをグループで議論しました。
vol.9
2023年12月6日
札幌の環境での課題と目指す未来
- ゲストスピーカー:
- 佐竹 輝洋 様 - 札幌市環境局環境都市推進部 環境政策課 環境政策担当係長
- タイムテーブル:
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15:25 前回の振り返り / COP28ドバイ会場参加中のSWiTCH佐座より COP会場ツアー
15:35 佐竹様レクチャー 「札幌市のおける気候変動対策と影響」
15:55 グループワーク
16:15 授業終了
授業内容
まず、授業冒頭においてCOPドバイ会場にいる佐座から、高校生に現地の様子をオンラインで見せる時間をとりました。札幌市環境局の佐竹輝洋さまから札幌市の脱炭素に向けた取り組みの目標や概要についてレクチャーをいただきました。GHG排出量を2030年に2013年比で59%削減すること、そのために地域内での熱供給プラント整備を進めていることなどをご説明いただきました。授業後半では、あまり認知が進んでいない熱供給プラントを市民に知ってもらう方法についてディスカッションを行いました。
vol.10
2023年12月13日
エコみやげに欲しいものをまとめる
- タイムテーブル:
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15:25 前回の振り返り
15:30 発表方法や内容を検討
15:55 グループワーク
16:15 授業終了
授業内容
最初に、授業での最終発表がどのような形で行われるかを確認し、市長に向けたビデオレターで話す内容を考えました。その内容をもとにグループで話し合った後、冬休みの宿題として個人で話す内容を考えてきました。
vol.11
2024年1月18日
エコみやげへの提言をまとめる
- タイムテーブル:
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15:25 宿題の共有
15:40 発表原稿の記入
15:55 発表する内容に対するフィードバック
16:05 来週までの宿題の確認
16:15 授業終了
授業内容
前回の授業で話し合った内容と、冬休みの間に行った宿題をもとに当日の発表資料と原稿の作成を開始しました。資料とフォーマットは配布したテンプレートをもとに行い、発表予定の内容について佐座・広瀬からフィードバックを行いました。また、SIAFに合わせたシチズンサイエンス企画用の実験手順についても説明しました。
vol.12
2024年1月29日
ビデオレターの作成・シチズンサイエンスの実施
- タイムテーブル:
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15:25 雪から調べる環境問題 シチズンサイエンス
15:40 発表の撮影
16:15 授業終了
授業内容
「シチズンサイエンス」として、雪をコーヒーフィルターでろ過し、大気中の空気に含まれる汚れを見る実験を行いました。実験結果をもとに身近な雪から環境問題を考えました。授業後半部では、作成した発表資料をもとにビデオの撮影を行いました。
参加した生徒の声
授業を通じて環境に対する意識・行動で変わったこと
■ 商品のパッケージは環境に優しいものでできているのか、何でできているのかを確認するようになった。
■ まずは食事を残さないようにしようと思いました。
■ 雪の実験をしたので、雪を見ると、見た目はキレイでも含まれている物質は汚いのかなと思うようになりました。
■ ゴミの分別をより気をつけるようになりました。
■ 電気消すのを忘れないようになった。雪を見るとBeing Aliveで行なった活動を思い出すことがある。
■ 現在の環境問題の深刻さがよくわかったので、日頃の生活の中にある環境に関することに目を向けるようになった。
■ 家族が消し忘れた部屋の電気を消すようになった。
■ 商品などがサステナブルかどうかをみる、エコバックを持ち歩く、節水節電を心がける。
■ 現在、社会ではエコフレンドリーやSDGsなど環境にまつわることがたくさん言われているが、ただきれい事を言っているだけだと感じていた。しかし、今回の探究でのSWiTCHさんや池田さんの話を通して本格的に考えられていることを知り、自分にできることは小さなことでもやりたいなと思った。
授業のコンテンツを通じて
サステナビリティに関する理解や関心が深まったと感じますか?
■ 自分が思っているよりも地球があぶないことがクイズを通じてわかった。
■ 知らなかった知識が知れて理解を深めることができたと思う。
■ 未来の札幌や地域がどうなっていくのかを学び、変えるためには何をすればいいのかを考えることができた。
■ 社会の中で環境に対しての活動を行なっている場を知れてよかった。今回の活動で、今の社会に深く関わっている人たちと交流でき、多くのことを理解して学べた。
■ 環境汚染による被害がなぜ起こってしまっているのかが理解できるようになったと思います。
■ もっと世界の現状について知ったり考えたいと感じた。
サステナブルな社会を作っていく上で、
札幌市や札幌市内の企業に改めて期待することはありますか?
■ 企業拡大のために全ての面から環境に配慮した策が大切になると思う。
■ もっと国民一人一人の意識が高まる方法を考えて欲しいと思う。
■ 環境に優しいものを使用するだけでなく、そのことを買った人に伝わるように工夫して欲しい。
■ 環境のことももちろんながら、「札幌らしさ」とは何なのか、を考えてみて活動していっていただけるとうれしいです。
■ より多くの企業がSDGsなどに協力して、地球温暖化に歯止めをかけてもらいたいです。
■ 今回の探究のように、学生から出た意見をより多く取り入れ、様々な世代から指示を得るべきだと思う。
■ その地域で作った物をその地域で消費する地産地消、環境へ配慮するという意識をもって活動をすること。
■ 月寒高校の生徒が考えた案をしっかり受け入れつつ、今の札幌市ができることを全力をつくして行なってほしいです。
■ 札幌の気候を利用した取り組みを行なって欲しい
■ エコ土産の活動をもう少し、札幌市全体へ広めていけるような取り組みを普及していければ良いと思っています。
担当者の声
SWITCH担当者 廣瀬
高校生と半年の講義を担当し提言を作成すること自体、私にとってもSWiTCHにとっても初の取り組みでしたが、環境問題を自分ごととして捉えてもらうこと・将来を考えて提言を作ることの双方を実現することができたと思います。
月寒高校の皆さんと一緒に取り組んで分かったことをもとに、さらにサステナブルを自分ごと化できるような授業をできるよう取り組んでいきます。