
地球温暖化や生物多様性の喪失などの環境課題は、私たちの暮らしと切り離せない現実です。
こうした課題 を大人になってから学び始めるのではなく、子どものころから自然と人間の関わりを実感し、持続可能な未来 について考える機会を持つことが大切です。
「サステナKIDSサマースクール」は、次世代を担う小学生が研究 者や地域の人々とともに学び、体験を通じて環境に向き合う感性を育むことを目的に開催します。さらに、子どもたちが仲間と意見を交わし、未来に向けた考えを発信することで、札幌市全体の環境意識の向上につなげました。

本プログラムは、2023年に開催されたG7 気候・エネルギー・環境大臣会合のソフトレガシーとして2024年度に実施した「サステナKIDS AWARD」がきっかけとなりスタートしました。
アワード受賞者をはじめとする小学生が、地球環境のことをサイエンスベースで学び、グローバルな視座を養う場を提供しようと、北海道 大学サステイナビリティ推進機構の出村総長特命参与・名誉教授のご尽力のもと実現しました。
企画概要
本プログラムは、北海道大学サステイナビリティ推進機構と札幌市、一般社団法人SWiTCHが連携し、企画 運営する小学生向けの環境教育イベントです。「地球の友だちになる夏」をテーマに、生物多様性・脱炭素・資 源の循環の3つの柱を、研究紹介やフィールド体験、企業とのワークショップを通して学びました。
2025年8月20日〜22日の3日間、札幌市内在住の小学4〜6年生、45名が参加。
会場は研究に囲まれる環境として北海道大学総合博物館 知の交流ホールと円山動物園で開催しました。参加者が「次世代グリーンリーダ ー」として、サマースクールから得た気づきを発信し、環境首都・札幌の持続可能につながることを期待しています。
サステナKIDS サマースクール
開催日時:2025年8月20日(水)・21日(木)・22日(金) 各日10:00〜15:30
会場:北海道大学、円山動物園
参加者:札幌市内の小学4年生〜6年生 45名が3日間参加

サマースクールは、北極と南極について学ぶことで地球規模に考え、農業や食・動物などの小学生に身近な研 究を通して地球環境について自分ごと化できるよう構成されています。
参加者が最先端の研究を研究者本人から対面で学べる貴重な機会となりました。

うんちは栄養
まず「うんち」は栄養そのものであるというお話がありました。うんちはもともと食べ物であり、体の中で分解・吸収でき なかった栄養が外に出てきたものであるため、決して無駄なものではなく、大切な資源です。
生態系物質循環
次に、栄養分の循環について解説がありました。植物を食べて育った牛がうんちをし、そのうんちは微生物によって分解されて土に戻り、再び植物を育てる力となります。このように、うんちは生態系の中で栄養を循環させる重要な役割を担っています。
うんちのエネルギー
また、うんちにはエネルギーもあります。循環の過程では、栄養分だけでなくエネルギーも残しながら次のサイクルへと受け渡されていくため、自然界の循環の仕組みの豊かさを学ぶことができます。
バイオ炭
温度を違えてつくられたバイオ炭3種類がグループに配られ、 手に取ったりニオイを嗅いだりして体験しました。うんちや食品残さを炭化した「バイオ炭」は大量の廃棄物を資源に変え、 化石燃料の使用を減らす効果もある、持続可能な社会づくりに役立つ技術です。

栄養素の循環
レクチャーでは、まず栄養素の循環について解説がありました。 物質は形を変えながら地球上を循環しており、産業革命以前には 比較的安定した循環が存在していたものの、当時の食料生産性は 低かったそうです。
窒素循環と炭素循環
次に窒素循環についてのお話がありました。窒素は私たちにとって必須の栄養素であり、アミノ酸やタンパク質の原料となります。炭素循環についても解説があり、窒素と同様に炭素も循環しており、地球上の生態系や農業活動において重要な役割を果たしていると紹介いただきました。
土や根を実際にさわって、いい土を体験
グループごとにブロック状の土を手でくずしたり、根を探したりして、いい土について、目・手・鼻で確認しました。
循環の中で土はどのように関わっていくのか
さらに、循環の中で土が果たす役割について、良い土は団粒構造 をもち、簡単に崩れず、空隙があるため空気や水が通りやすいこと。加えて、スポンジのように炭素や窒素を保持できることが、 持続的な生産に重要です。
人口あたりの農地は減り続けている
人口増加に伴い一人当たりの農地は減り続けており、地球環境を 維持しつつ食料を生産するには、土地面積あたりの生産性を上げ、より少ない肥料で効率的に生産し、持続的に次世代へつなげていくことが必要です。

食料自給率の低下
日本の食料自給率は約38%で、国民の3人に1人しか国産の食料を摂取できていません。
少子高齢化と農家数の減少による影響
耕地面積は減少しているものの、それ以上に農家戸数が減少しており、1戸当たりの耕地面積は増加しています。また、就業人口も減少しているため、作業の負担は増え、適期に作業を終 わらせるためには夜間作業を行う必要があるそうです。
スマート農業のこれから
スマート農業の取り組みについても紹介がありました。ロボット技術やICT(情報通信技術)を活用することで、農業生産の省力化や品質向上、環境負荷の低減が可能です。
ビジョンセンサと肥培管理
具体例として、ビジョンセンサを用いた肥培管理についても解説がありました。作物の生育状況をセンサで確認し、得られたデータに基づき農薬や肥料の量を調整することで、効率的かつ適切な農業管理ができます。

企業ドクター
レクチャーでは、「企業ドクター」の役割について紹介があり ました。人間が病気や悩みを医者に相談するように、企業も悩 みや課題を企業ドクターに相談し、解決していくとのことです。企業ドクターは、会社のお金の使い方やお客様の集め方のアドバイス、さらに企業としてのエコ活動の支援などを行って います。
環境活動に取り組みたい3人の社長の事例
「紙の無駄を減らすにはどうしたらいい?」「再生エネルギーにどんなものがあるか知りたい」「電気を節約するにはどうしたらいい?」という悩みをもつ3人の社長さんのためにグループワークでアイデアを出し合いました。
企業ドクターからのアドバイス
廃棄される紙を資源として有効活用できる再生紙化サービス 「PELP!(ペルプ)」。非化石証書を付帯させることで実質再生可能エネルギー100%の電力を提供できる「地球にやさしいで んき」や製品の84%がリユース可能なLEDであり、効率的かつ環境にやさしい電力利用が可能な「REShine(リシャイン)」の紹介がありました。
アーバンベア問題
レクチャーでは「アーバンベア」について説明がありました。ア ーバンベアとは市街地に出没するクマのことで、近年北海道ではその数が増加しています。
「対処」ではなく「予防」
ヒグマとの関わり方について、「対処」ではなく「予防」が最も大切です。ヒグマは人を怖がる警戒心の強い動物であり、私たちが対応を誤らなければ襲われることはほとんどありません。「交通事故と同じように、遭ったときの対処を考えるのではなく、そもそも遭わないようにすることが重要」です。
私たちにできることはまず知ること
私たちができることは、ヒグマの生態や現在の課題について知 り、関心を持つことが大切です。ヒグマと人間との共存について考えましょう。
円山動物園の個体も保管されている
北海道大学総合博物館には、たくさんの動物の骨が保管されていました。中には、円山動物園で飼育されていて亡くなったあとに 収蔵された個体もありました。これらの骨は、研究や教育に役立てられているそうです。
骨から知る動物のくらし
標本室では、キリン、イッカク、クマの骨などを直接触り、その動物の特徴を知りました。牛を大量に襲撃したことで知られるヒグマ、「OSO18」も保管されていました。保管された骨を調べ ることで、どんなものを食べてきたのかを知ることができるそう です。
骨に残る、人と動物の関わり
最近は、クマやシカが人の暮らしの近くに現れることが増え、問題になっています。標本室には、そうした動物の骨も保管されて おり、頭の骨に銃のあとが残っているものもありました。ハンターは、動物を苦しませたり二次被害を出さないように、できるだけ頭や心臓をねらって仕留めるそうです。
南極地域観測の体制について
南極地域観測の観測隊は約90名で構成され、そのうち約70名が観測や設営を担当しています。また、輸送や観測支援には海上自衛隊の砕氷艦「しらせ」など約180名が関わっているそうです。青木先生は次回の観測隊で隊長を務める予定です。
南極観測では何をしているのか?
レクチャーでは、青木先生が南極観測でどんな研究をしているか紹介いただきました。東南極のトッテン氷河から氷が流出し、海面上昇につながっていることが観測されており、その背景にある氷と海が地球に及ぼす影響をどのように観測しているか写真や動画でたのしく紹介いただきました。
南極の氷を触る!
数万年前の氷を水の入ったコップに入れるとシュワーという弾ける音をたてて解けていきます。氷に触れながら、南極の自然 を身近に体験する貴重な時間となりました。また、大気の構造や成分を測定する観測カプセルを持参いただき、手に取ってその重さや形を観察しました。
カーボンクエスト
「カーボンクエスト」という自分が炭素分子になったつもりで地球をめぐる、すごろく方式のゲームを体験しました。サイコロを振って出た目に応じて移動し、その体験を冒険記に記録しながら進みました。
炭素循環を理解する
この活動を通して、炭素が土や大気などを行き来し、自然界で循環していることを理解しました。実際に体験することで、生物と環境がどのようにつながっているかを実感できました。
循環のしくみを解説 温暖化のメカニズム
エゾリンクの皆さんが炭素の循環図で、地球温暖化のメカニズムについて解説いただきました。ゲームを楽しみながら、気候 変動の原因や炭素循環の重要性について理解を深めました。

北極の動物たちの毛皮
レクチャーでは北極の動物、ゴマフアザラシ・タテゴトアザラ シ・ホッキョクギツネ・トナカイ・ホッキョクウサギ・ジャコウウシの毛皮や毛皮でつくった手袋や帽子を持参していただき、たくさんの毛皮を触りながら、動物たちの生態について学びまし た。
北極での研究における信頼関係
北極での研究活動においては、現地の人々との信頼関係が欠かせません。研究のために海へ出る際には、現地の人の船を借りた り、コロナ禍で研究者が北極に行けなかったときには、現地の人々に代わりに調査をしてもらったこともあったそうです。
北極圏の温暖化は日本の気候にも大きな影響がある
北極圏の温暖化が急速に進んでいます。氷河が融けることで海面が上昇し、その影響は遠い地域の出来事ではなく、日本の気候にも結びついています。
北極圏での生活
北極に暮らす人々の生活についても紹介がありました。補給船がやって来るのは1年に夏のわずか2回だけで、その到着を現地の人々はとても心待ちにしているそうです。

ホッキョクグマの特徴
ホッキョクグマは寒冷地に適応した動物で、耳や尾が小さいため熱を逃がしにくい特徴があります。体には10cmの脂肪層があり、 さらにふわふわの短毛と空洞のある長毛が二重に生えて体を守ります。足裏にも毛があり、暖かさだけでなく滑り止めの役割も果たしているそうです。
ホッキョクグマの食生活
ホッキョクグマが寒さをしのぐには高カロリーの食事が不可欠で、特にアザラシを狩って脂肪を蓄えます。大きなアザラシ1頭で 約8日分のエネルギーを得られるとされます。夏は海氷が減りアザラシも少なくなるため、冬のうちに十分な脂肪をためることが重 要で、海氷が長く存在することが生存に直結するそうです。
ホッキョクグマは絶滅の危機
ホッキョクグマは絶滅の危機に直面しています。狩猟や海洋プラスチック、生物濃縮に加え、地球温暖化による海氷減少が大きな要因です。これはホッキョクグマだけの問題ではなく、地球全体 の生態系に関わる課題であり、「誰かに任せてよいものではありません」。一人ひとりが小さな行動から取り組むことが大切です。
白い恋人パークと円山動物園はつながってる!
白い恋人パークでは中庭を美しく保つために枝葉を定期的に伐採しています。以前は伐採した枝葉は廃棄されていました が、コロナ禍をきっかけに地域のためにできることを模索 し、従業員からの提案で円山動物園に伐採した枝葉はゾウの餌や遊び道具として活用されています。
動物のうんちが栄養に!?
円山動物園では象舎から出るゾウのフンで堆肥をつくってお り、白い恋人パークの中庭で堆肥として再利用されています。この堆肥には土を柔らかくする効果があり、花々の生育に役立っています。以前は廃棄されていた枝葉ですが、今はゾウの餌になり、堆肥となってパークに戻ってきて持続可能な循環が生まれています。
ゾウ舎とバイオ発酵処理施設を見学
以前、ゾウのフンは燃やされ、埋め立て処分されていまし た。ゾウのフンに食べ残しや敷きわらを混ぜ、特別な菌を加えて高温発酵させ堆肥にします。発酵が完了すると、においはほとんど気にならなくなります。動物園に寄付すると堆肥 がもらえます。

気候変動でサッカーができなくなっている!?
Jリーグでは天候が原因で試合中止になった回数は2017年以前と2018年以降を比較すると4.7倍に増えているそうです。また、熱中症による救急搬送件数も、2014年~2018年と 2019年~2023年を比べると1.4倍に増加しており、このままではサッカーができなくなってしまう可能性があるため、Jリ ーグ全体でサステナブルな取り組みを進めていくことになった そうです。
コンサドーレのサステナブルな取り組み「PASS」
北海道コンサドーレ札幌では、サステナブルな取り組み 「PASS」で、練習場で使用する電気を実質再生可能エネルギ ーに切り替えたり、森を育てる活動、さらにペットボトルキャップを回収して黒板消しにリサイクルし学校へ届ける活動など、クラブ全体でさまざまな工夫を行っています。

修了式に合わせて、会場に北海道コンサドーレ札幌のマスコ ット、ドーレくんがかけつけてくれました。参加者一人一人と記念撮影をした後、全員で集合写真も撮影しました。

北海道大学では気候変動や生物多様性など地球温暖化の課題解決に貢献するさまざまな研究が進められています。
今回のサステナKIDSサマースクールでは「地球と友だちになる夏。」がメインテーマ。
北大総合博物館と札幌円山動物園に世界的研究者が集結し、みなさんへわかりやすくお話をしてくれました。みなさんはそれぞれのお話を熱心に聞き、そして自分の宣言をタペストリーにまとめる作品づくりも体験しました。
今回のサマースクールの学びが 持続可能な社会の創り手の育成の一助となり、参加した小学生みなさんが将来、次世代グリーンリーダーとして活躍していることを大いに期待しています。
ワークショップを受講するごとに各自でワークシートを作成しました。
登壇者のトピックに沿った、コラージュ素材を各自が貼り付け、コメントを記入し完成させておき、 最終日にタテにつなげ、約2メートルの長さになりました。
タペストリーの最上部には、各自の環境アクション宣言も力強く書かれています。

3日間の学びを終えて、生徒たちはそれぞれが学んだ内容をタペストリーにまとめました。
また、それぞれが学び を通して大切だと考えた内容を、「環境宣言」として書き、貼りだしてもらいました。
以下ではその一部を紹介します。





参加者の学校名リスト:

サポート企業・団体・学校:
