
一般社団法人SWiTCHは8月7日(金)、「HTT INNOVATORS TALK」を東急不動産株式会社との共催にて開催いたしました。
HTT INNOVATORS TALK
-暑すぎる夏を乗り越える先端事例をトップランナーから学ぶ-
日時:2026年8月7日(金) 12:00~14:00
場所:SAKURA DEEPTECH SHIBUYA
形式:対面・ストリーミング配信
参加費:無料
参加企業数:39社 / 6団体
参加者:合計74名
主催:東急不動産株式会社
共催:一般社団法人SWiTCH
協力:HTT、一般社団法人 日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)、team green、eMotion Fleet、EX-Fusion
〇開催目的
東京都では脱炭素に向けた取り組みとしてHTT(へらす・つくる・ためる)が呼びかけられていますが、その一方で企業は具体的にどのような取り組みを進めていけばよいのかが課題となっています。
観測史上最も暑い夏を体験し、誰もが地球環境に注目せざ るをえなくなる中、企業はいかに脱炭素の潮流をつかみアクションを起こしていけばよいのか。
そのヒントを探るべく、グローバルに活躍する環境先進企業からヒートアイランドと熱中症対策・次世代エネルギーの最新情報を通して、対話と交流を深めました。

〇スピーカー
松尾 雄介(一般社団法人 日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)事務局長)
白木 秀司(eMotion Fleet株式会社 代表取締役社長)
松尾 一輝(株式会社EX -Fusion 代表取締役・CEO)
高田 秀之(株式会社東急不動産 R&D センター シニアフェロー)
佐座 槙苗(一般社団法人SWiTCH 代表理事)
〇タイムテーブル
12:00 挨拶|イベント概要とHTTについて
12:05 第1部|取り組み紹介
・JCLP
・株式会社EX-Fusion
・eMotion Fleet株式会社
・株式会社東急不動産 R&D センター
12:45 第2部|クロストーク
13:10 第3部|質疑応答、まとめメッセージ
13:30 第4部|交流会
14:00 終了

SWiTCH 佐座より
本日は「HTT INNOVATORS TALK-暑すぎる夏を乗り越える先端事例をトップランナーから学ぶ-」へお越しいただき、ありがとうございます。
この夏、日本では記録的な猛暑が続き、世界でも暑さによる深刻な被害が生まれています。もはや気候変動は将来のリスクではなく目の前にある現実であることを誰もが痛感している中で、私たちは持続可能な未来に向けた具体的な歩みを進めなければなりません。
渋谷では「暑すぎる夏を終わらせる日」として啓発のための様々なイベントが開催されているほか、東京都ではHTT「電力をへらす・つくる・ためる」をキーワードに脱炭素のアクションを後押しています。
このセッションを通じて、こうした気候変動への対応をビジネスや技術の観点からどのように社会に広げていくのか、企業のみなさまと一緒にヒントを探っていきたいと考えています。どうぞ最後までよろしくお願いいたします。
本イベントでは、日本気候リーダーズ・パートナーシップの松尾氏、㈱EX-Fusionの松尾氏、eMotion Fleet㈱の白木氏、㈱東急不動産の高田氏をお招きし、第1部ではそれぞれの事業内容とHTTの進め方についての考えを語っていただきました。
◯JCLP 松尾 氏

気候変動はもはやエコの問題ではありません。ビジネスの問題として取り組まないと変わらない。なぜなら気候変動は食品価格や労働時間など国際的に様々な社会問題として顕在化しているからです。
近年は再エネやEVの市場が伸びるなど脱炭素に向けた動きが進んでいます。しかし、日本では脱炭素に向けた動きが伸び悩んでいます。その原因は、日本での脱炭素ビジネスは割高で「正直者が馬鹿を見る」状態になっているからです。
また、気候変動の問題は原因と結果の間にギャップがあるという心理的に取り組みにくい構造があることが科学的にも示されています。したがって、個人や個人や企業の意識に頼るのではなく、現実的な制度設計につながるような世論の醸成が必要です。
◯EX-Fusion 松尾 氏

レーザーの力でフュージョン(核融合)を起こしエネルギーを作り出すことを目指しています。フュージョンは二酸化炭素を排出せず、燃料も海水由来という持続可能な発電方法です。また、瞬間的な反応を繰り返すことで発電するため、発電量を調整でき、ベースロード電源としてもピーク電源としても利用できるという点も強みの一つです。
レーザー核融合はアメリカでの成果でエネルギー純増率(投入したエネルギーに対して出力されるエネルギー)が4倍を超えるようになりました。これをますます向上させると同時に、燃料の確保や安定性に向けて取り組んでいきます。2030年代には実証的な発電を開始できる見込みです。
◯eMotion Fleet 白木 氏

経済的なグリーンモビリティ現場から実現することを目指しています。日本のEV普及率は2〜3%ですが、海外ではバッテリーコスト低下に伴う経済性合理性の観点から普及が進んでおり、日本でも2028年頃から本格的に普及すると予想しています。
物流・交通事業者の98%を占める保有台数100台未満の中小事業者に対し、GXの何から着手すべきか悩む現場に寄り添い、DX/GXを伴走支援することが弊社の役割です。具体的には、まずは車載器で運行データを取得・解析して燃料費や管理業務時間などのコストを削減するDX支援からスタートし、そこで創出したデータや原資を活用してEV導入や運用を総合的にサポートします。EV化は運用を徹底するほど経済合理性が向上するため、今後も現場・地域に根差した形で、脱炭素化と経済性を両立した事業を展開してまいります。
◯東急不動産R&Dセンター 高田 氏

緩和と適応の双方を加速していくことを目指しています。東急不動産では広域渋谷圏での複数イベントを継続的に開催しており、これらを通して緩和と適応の啓発を進めています。緩和については東京都のHTT事業として動画を放映したり、適応についてはクールスポットの設置や開放を行っています。
東急不動産の事業本体の中でもへらす・つくる・ためるを実践しており、これらを一気通貫で実現できることが会社としての強みです。例えば室外機周辺で芋を栽培することで葉の蒸散や日陰で周辺温度を下げたり室外機周辺の気温を下げて空調効率を上げたりするなどの取り組みが進んでいます。
こうした取り組みが話題性を呼び、気候変動へ意識を向けるきっかけとなっている側面もある。このような形で緩和と適応をまちづくりの基盤にしていくことを目指しています。
第2部のクロストークでは、ビジネス環境、エネルギー生産、現場へのGX適用、都市開発というそれぞれの専門分野から今後の東京のあるべき姿を議論していただきました。
SWiTCH 佐座
Q:日本では先月だけでも9000人が熱中症で搬送されるなど、数年前と比べても気候変動への対応は待ったなしの状況であり、不安をあおるだけでなく実際に行動をすることの必要性が改めて問われています。
本日登壇されたみなさまはどのようにお考えでしょうか?
eMotion Fleet 白木 氏
弊社の事業はBtoB領域が中心ですが、特に発進・停止(Stop & Go)頻度の高い東京において、ラストワンマイルを担う物流・交通事業者のEV化は極めて重要です。EV化は二酸化炭素排出量の減少にとどまらず、静音性や低振動化、乗り降りのしやすい車両構造により、ドライバーの負担軽減や健康維持にも大きく寄与する点が重要なメリットです。
東急不動産 R&D センター 高田 氏
東京は電気を消費する側の地域だからこそ、「エリア・エネルギー・マネジメント」等により、消費を抑えるような「へらす」取り組みの必要性が高いです。そこで生まれる「調整力」は、発電所の新設を押さえることにつながり、「容量市場」を通じて経済的なメリットも得られるというのはHTTを進めるうえでのインセンティブになるでしょう。
EX-Fusion 松尾 氏
2ha(広めの校庭くらい)の少ない敷地面積で発電を行えることがフュージョンの強味であり、燃料が1㎜程度であることから、さらにコンパクトにしていける可能性があります。東京という都市が発展し続ける中でも、その需要に対応していけるだけの電力供給を実現できる技術・設備を開発しておく必要があります。

SWiTCH 佐座
ほかの登壇者のみなさまに聞いてみたいことがあればぜひ教えてください。
東急不動産 R&D センター 高田 氏
Q.フュージョン技術が都市の中に実装されていくことを考えた時に、都市開発においては何が重要になってくると考えていますか?
EX-Fusion 松尾 氏
まずは発電のための土地の確保が重要です。さらに、発電量の調整が容易であるため蓄電池を使用せずにダイレクトに電力を供給できることを前提にした建築物の設計等が重要になってくると考えています。
eMotion Fleet 白木 氏
まちづくりのDXにおいては、車両や充電インフラなどのアセットを一元管理・最適化する高度なマネジメントシステムが重要になってくると思います。都市開発やデベロッパーの視点から、こうしたシステムとの連携や都市への実装について、どのように捉えられているのでしょうか。
東急不動産 R&D センター 高田 氏
まずは広域渋谷圏の中で実証して確かめていこうとしている段階です。物流拠点の開発も含めた実証についてはまだこれからであるため、ぜひ他の企業の皆さんとも協力していきたいと考えています。
EX-Fusion 松尾 氏
Q.日本は脱炭素への意識が高いと感じますが、HTTのような取り組みを通じてさらに個人・企業の脱炭素への機運を醸成していくには何が必要だと思いますか?
SWiTCH 佐座
東京都は建物が密集しているため、発電にしても物流拠点開発にしても設備の新設が難しいという部分があるが、だからこそ都市開発などの会社を中心に面的な開発をしていき、シンガポールなどのように風景に溶け込むレベルを目指していくべきだと思います。
日本でもすでに地方部では取り組みの進んでいるエリアもあるので、東京も感度を上げていけば都市のあり方が変わっていくはずです。

参加者の皆様からも様々なご意見やご質問をいただきました。
参加者
Q.都市は大きいからこそ、脱炭素だけでなくサーキュラーエコノミーや緑化などそのほかの領域の取組みも重要になってくると思うのですが、都市開発の観点からはどのようにお考えでしょうか?
東急不動産 R&Dセンター 高田 氏
本日は会の趣旨に合わせて脱炭素を中心に話しましたが、会社としては、脱炭素・循環型社会・生物多様性をバランスよく進めていくことを目指しています。この三者は決して切り離して考えられるものではありません。したがって、三者をうまく合わせることでウェルビーイングを目指しています。例えば建設についても循環型素材を利用し、環境にも経営にも人にもやさしい建物を建てていこうとしています。
参加者
Q.JCLPの松尾さんのお話にも出てきましたが、トランプ米大統領の気候変動を認めようとしない姿勢が世界全体の気候変動対策に大きな悪影響を及ぼしています。こうした後ろ向きな姿勢に対して科学はどのように向き合っていけばよいのでしょうか?
EX-Fusion 松尾 氏
以前、日米の科学者の会議でもグリーンテックへの資金打ち切りに際してトランプ氏のスタンスが話題になったことがありました。少なくとも二酸化炭素が地球温暖化を発生させていることは物理的に正しいと言えますが、そこに対して人間の活動がどこまで影響を及ぼしうるのかを示し、解決策を提示していくことは今後の工学が向き合わなければならない課題です。
参加者
Q.一生活者として、夏になると暑さやその対策への話はよくするものの、情報量ばかりが増えてあるべき姿が見えてこないと感じます。科学者のみなさんから見えている「あるべき姿」はどのようなものなのでしょうか?
eMotion Fleet 白木 氏
EV導入が進まない企業の特徴は形式的な脱炭素が目的になってしまっているということです。一方で成果を上げている企業は、ランニングコスト削減やドライバーの負担削減といった業務効率化の手段としてGXを活用しています。このように、脱炭素を「コストがかかる業務」として捉えるのではなく、「社会や現場の実用性を高め、事業の質を向上させるツール」として日常業務や生活の中にうまく組み込んでいくことが、GXをもう一段階前進させるためのカギだと思います。


EX-Fusion 松尾 氏
フュージョンに取り組んでいる理由には、脱炭素に向けてという思いだけでなく、より根本的に、火、蒸気、電気というエネルギー変換の歴史を終わらせ人類の活動に本質的な継続性をもたらしたいという理念があります。ぜひこの技術を社会実装していきたいと思います。
eMotion Fleet 白木 氏
GXを進めるには、現場への浸透が欠かせません。人手不足やコスト高など、GX普及の障壁となっている現場のリアルな課題に真摯に向き合いつつ、実践的かつ現実的なGXソリューションをご提案できるよう、今後も現場起点で取り組みを推進してまいります。
東急不動産 R&D センター 高田 氏
デベロッパーと他の事業者が協業して脱炭素に取り組んでいくことが重要であると考えています。今回ご一緒したエネルギーや物流といった業界のみなさんともさらに取り組みを進めていきたいです。
SWiTCH 佐座
気候変動が進む中で、企業もこのままのエネルギーの使い方で大丈夫なのかという課題意識を持っていくことが必要な時代です。様々なビジネスのお話を伺うことができ、非常に有意義な時間となりました。

本編終了後は、登壇者と参加者を交えての交流会を開催。東急不動産 小田 氏より、team greenも行われました。
東急不動産 小田 氏より
東急不動産は代官山での環境教育などでSWiTCHと協力しています。また、東急不動産のビルに入居している企業の活動をサポートするための様々な取り組みを進めており、その中で生まれたのが、team greenです。
例えば、環境セミナーやネットワーキングパーティーへの招待など、学びを深めたり企業同士のつながりを生んだりするようなイベントを通して各企業の具体的な行動を促しています。一社での取り組みはなかなか認知されにくいため、日経新聞に共同広告を掲載したり、当社の環境アイコンである「ふどうさん」を利用したり、など発信力を高めつつ、企業が連携して取り組みを深めていける仕組みづくりを整えています。



〇参加者の所属組織(45企業・団体)